弁慶の制札|Web資料館|三春町歴史民俗資料館
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弁慶の制札
兵庫県神戸市の須磨寺は桜の名所です。
ここには、『源氏物語』「須磨の巻」で、主人公光源氏が植えた「若木の桜」という桜があるそうですが、もちろん後世の人が植えたものでしょう。
ところで、須磨寺には伝弁慶筆「若木の桜制札」というものもあるそうです。
そこには、「此花江南所無也、一枝於折盗之輩者、任天永紅葉之例、伐一枝者可剪一指、寿永三年二月日」と書かれています。
意味は、「もし若木の桜の枝を折る者がいたら、一枝に対して指一本を切るぞ」いうものです。
いかにも弁慶らしいセリフですが、この制札がもう一箇所あるとしたら、みなさんはどう思いますか?
江戸時代の三春名所案内記「松庭雑談」に、次のような記事が載せられています。
瀧村の桜
瀧村、纔に城下より壱里餘也。近郷の名木也。本木ふとさ五囲余、枝縦横十八間、糸桜也。花の頃、近隣の尊鄙群集ス。人皆、邊鄙にありて、名をなさじるを惜しむ。桜の傍に不動堂あり。堂に掛ル額あり。武蔵坊弁慶ノ筆なり。如左。
須磨寺桜
此花紅南所無也、一枝於折盗之
輩者、任天永紅葉之例、伐一枝
可替一指
寿永三年二月日
文意は改めて言うまでもありません。
制札の文言に多少の相違はありますが、丁寧に「須磨寺桜」とまで書かれており、まさに「若木の桜制札」そのものです。
この制札、弁慶が京都で活躍した時期に須磨寺で書き、源義経とともに平泉を目指して落ち延びる際に滝桜で書いたとしたら…。
歴史のロマンを感じさせますね。