三春こけし|Web資料館|三春町歴史民俗資料館
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三春こけし
三春こけし
「伝統こけし」には、「技法・形態・描彩を系譜的に伝承しているもの」という定義があり、これに対して伝統を踏襲していない自由な形のこけしを「新型こけし」と呼びます。
昭和20年代後半から昭和40年代前半の「第2次こけしブーム」と言われた時代には、各観光地でさまざまな種類の新型こけしが土産物として売られていました。
「三春こけし」もそうしたこけしのひとつで、「らっこコレクション」の収集者のひとり、故・高久田脩司氏の助言のもと、制作が始められたと言います。
制作者は船引町在住のご夫妻で、土湯や宮城県のこけしを参考にご主人が木地を挽き、奥様が描彩を行っていたそうです。
伝統こけしからかけ離れた形態が多い新型こけしですが、大きめの頭にくびれた胴を持つ三春こけしの形には、弥治郎や遠刈田のこけしの影響が感じられます。
また、頭頂部のロクロ模様と柔らかな線で描かれた髪飾りは、土湯こけしの「蛇の目」と「カセ」によく似ています。
胴模様には、あやめや桜・梅などを組み合わせたものや、裾模様に菊が描かれたものなどがあります。
伝統こけしの風情が感じられる「三春こけし」の完成は、高久田氏の高い審美眼と制作者の努力・研究の成果、そしてなによりも、郷土玩具を愛する心が導いたものと言えるでしょう。
残念なことに現在は廃絶していますが、最盛期には裏磐梯周辺の観光地でも販売されていたそうです。