三春の文化財3 伝統三春盆踊り|歴民コラム|三春町歴史民俗資料館
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歴民コラム
三春の文化財3 伝統三春盆踊り
平成元年に指定された「伝統三春盆踊り」は、保存が難しい文化財の一つです。
現在の踊りは、実は最も盛んに踊られていた、大正頃の「三春盆踊り」とは異なっているのです。
三春の盆踊りが、いつごろから始まったのかは詳しくわかっていませんが、江戸時代にはすでに行われており、凶作などで人口が減ったりすると、その維持に苦心していたようです。
福島県内では古式を残した盆踊りの筆頭とされており、その理由の一つは、明治維新以前に日本人が行っていた「なんば」の動きが残っている、ということにあるのです。
「なんば歩き」では、あまり手を振り上げず、右手と右足、左手と左足が同時に出るかっこうになります。
つまり、右手を振り上げたら左足、左手が出たら右足を出す、という交互の動きは、近代以降に西洋式の軍隊や、小学校での体育により普及したものなのです。
それでも、昔ながらの踊りを体得している一定の年齢以上の方は、右手を動かしたら右を向き、左足を動かしたら左を向く、という踊り方をしているようです。
現在の踊りは、昭和になって簡略化されたもので、最近では、完全に前を向いて歩きながら手だけを動かす人も見受けられます。
もはや、『伝統盆踊り』を踊ることができる人は少なくなってきています。
盆踊りは、先祖の魂を迎えてその供養のために踊り、そして送るものとも言われます。
かつては辛い労働の息抜きであり、男女の出会いの場でもありました。下駄がすり減るほど踊った、という話はよく聞かれます。
また、櫓(やぐら)の歌や撥(ばち)さばきが華やかさを盛り上げる、こうした伝統も忘れてはならないところでしょう。
踊りも世につれ、時代の流行にあわせて変わっていくものかもしれません。
たくさんの人に盆踊りを楽しんでもらいつつ、変化・変遷を記録することが重要な課題と思われます。
(2020年6月)