三春の文化財11 三春町“未”指定文化財 らっこコレクション|歴民コラム|三春町歴史民俗資料館
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三春町歴史民俗資料館より、三春町の歴史や文化、ゆかりのある人物伝、資料館に収蔵されている資料などについて、コラムをお届けします。
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歴民コラム
三春の文化財11 三春町“未”指定文化財 らっこコレクション
今回は、まだ指定文化財になっていない資料についてご紹介します。
三春といえば、三春駒に三春人形、三春ダルマと、郷土玩具のふるさととして知られているのですが、近年三春駒は町内では制作されなくなり、三春人形を知らない人も増えてきました。
そこで、ぜひ大町にある三春郷土人形館へお出かけください。
江戸時代の作例となる三春駒や三春人形などが展示されています。
これら古い作品は、今後消えていくことはあっても、決して増えることはありません。
これらの作品を保存していくことは、資料館の役割の一つですが、今から90年も前、これらが大事な文化遺産であると考えた二人の東北大学生が、廃絶をおそれ、収集してくれたことを忘れることはできません。
大学生だった中井淳(後に関西学院大学教授)と高久田脩一(後に旧制田村中学の教師となる)の二人が収集した玩具類は、彼らが仲間たちと住んだ家に名づけた“羅虎山塞(らっこさんさい)”にちなんで、「らっこコレクション」と呼ばれています。
三春に関わるものだけではなく、昭和初期のこけし、江戸~明治時代の東北地方の土人形や郷土玩具と多岐に渡る資料は、高久田氏の教え子であった橋元四郎平氏宅の蔵に保管されたことから、今も同じ蔵で公開することとなっているのです(人形館2棟の蔵のうち、もう1棟は白石家の座敷蔵)。
人々が愛し、培ってきた文化が大事に残されているということ、その技術や手法、優れた美的感覚などを考えれば、現存する江戸期の三春駒や三春人形などは指定文化財となってもおかしくはありません。
ただ、こうしたコレクションの場合には、それらが集められた背景や全体の資料価値が指定の要件となり、その中の特定のものだけを文化財として指定するということはあまりありません。
しかし、三春町として残して行くべき資料の一つとして、今後の指定を視野に入れ、検討していかなくてはならないものであることは間違いありません。
(2021年2月)