「磐城三春大神宮奉額略図」 (助川音松資料)|歴民コラム 収蔵資料紹介編4|三春町歴史民俗資料館
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「磐城三春大神宮奉額略図」 (助川音松資料)
福島県最大の算額は、田村市船引町の安倍文珠堂のもの(横 387cm・縦 160cm)と言われます。
三春大神宮に奉納されていた最大の算額は、これを超える大きさだったと言われますが、残念ながら現存しません。
しかし、その内容については、奉納者である佐久間庸軒(最上流和算の先生で、三春藩講所でも教授した)の門人らが印刷して配布したことから、今に伝えられています。
算額は、日本で発達した独自の数学である「和算」を学んだ人々が、その成果として、感謝と祈願を込めて神社仏閣に奉納したもので、また他の人々への挑戦として出題するものでもありました。
「入門者も千人を越えて、その中から 200 名あまりが大神宮の社前に掲げ、和算を極めるのに神助をいただいたことを感謝する」といった趣旨のことが、この算額に庸軒の名前とともに記されています。
これは明治9年のことで、幕末から明治にかけて多くの人が和算を学んでいたことがわかります。
和算の内容は、方程式を解く天元術や天竄術をはじめ、規矩術(幾何学)、町見術(測量)等さまざまですが、大神宮に奉納されたものは、すべて円の直径や面積を求める問題で、出題の順番が各問の解答になっているのだそうです。
この「磐城三春大神宮奉額略図」を印刷した版木は現存しており(個人蔵)、資料館に収蔵されているものは、庸軒の弟子の一人であった助川音松が、刷られた1 枚を自分で木枠に張って、小さな算額に仕立てたものです。師を敬愛してやまなかった音松が、その業績を大事にしていた姿がしのばれます。
磐城三春大神宮奉額略図
(2023年4月 藤井典子)