沼沢の春日神社・奉納相撲の化粧まわし|歴民コラム 収蔵資料紹介編6|三春町歴史民俗資料館
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歴民コラム
沼沢の春日神社・奉納相撲の化粧まわし
大相撲がお好きな方は多いのではないでしょうか。
その相撲の始まりにはいろいろな説がありますが、もともとは神事として始められており、各地で土地の神様への奉納相撲が行われてきました。
これらは、江戸時代に行われ始めた、現在も続くスポーツとしての相撲とは別に行われて来たものですが、娯楽の少なかった時代には、非常に喜ばれたと思われます。
現在の相撲とは別、というのは、神事として行われる奉納相撲は、その年の作物の豊作・凶作を占う役目を持ったものが多く、どちらかが勝てば豊作となる、災害なく過ごせる、などという予祝行事として行われて来たからです。
場合によっては、勝ち負けはあるにせよ、わざと勝敗を言わない、などの縁起かつぎを行うところもあったようです。
今回ご紹介する、沼沢地区に伝わる化粧まわしは、春日神社の秋まつりに、古くから奉納されて来た相撲に使われたもので、この奉納相撲は、氏子の健康を祈願して行われたものと伝えられます。
「矢掛松」の四股名が入っていますが、矢掛松とは、坂上田村麻呂が戦勝を祝して矢を掛けたという松の古木から来ていると思われ、大男だったと伝えられる田村麻呂にあやかった名前なのかもしれません。
奉納相撲は昭和48年ごろまで続けられ、地元の佐藤家が司っていました。
着物などの布資料は虫害にあいやすく、失われてしまうことが多いのですが、この化粧まわしは良い状態で残っています。
その伝統を語り継ぐとともに残して行きたい資料です。
「矢掛松」の化粧まわし
(2023年6月 藤井典子)