矢立(やたて)|歴民コラム 収蔵資料紹介編7|三春町歴史民俗資料館
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歴民コラム
矢立(やたて)
矢立は、江戸時代末頃まで使用されていた文房具で、今で言う「筆箱」です。
細い棒状の部分は、先端にフタがあり、筆を入れるようになっています。
写真向って右側の丸い部分には、艾(もぐさ)に墨をしみ込ませて入れていました。
この矢立の場合には、筆を入れる部分に細いカッターのようなものも仕込んであり、これで紙を切ることもできます。
江戸時代の人びとは、筆と墨とを携行する場合、大きさや形状に差はあれども矢立を使用していました。
持ち歩く時は、筆を入れる細い棒状の部分を帯に挟み、墨を入れる部分は、その上に顔を出すようなかっこうになります。
そのため、この資料のように、装飾を施すことも多かったようです。
江戸時代には、矢立や煙草入れなどの日常的に使う用具に工夫をこらし、きれいな細工を施すことが流行しました。
しかし、明治時代に入り、鉛筆や万年筆などの西洋の文房具が輸入されるようになると、あっというまにこうした小物は姿を消して行ったのです。
ご紹介した資料は、資料館の常設展示室で公開中です。
常設展示室の矢立(江戸時代末ごろ)
(2023年8月 藤井典子)