師走|歴民コラム 三春歳時記9|三春町歴史民俗資料館
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歴民コラム 三春歳時記 9
師走
12月は、一般的に年末で誰もが忙しく、師匠も走るということで、師走となったと言われています。
ほかに、1年の最後であることから極月や限月とも呼ばれ、江戸時代の古文書などでは臘月と記されることが多く、臘は新年と旧年をつなぎ合わせるという意味です。
二十四節気では、7日が大雪で遠い山の峰が雪で覆われ、21日は冬至で太陽が最も低く、昼が一番短い日となるので、冬本番を迎える時期です。
12月8日は事納めの日で、カゴ吊るしや筆納めをするほか、各種の師匠や大家などへ豆腐を贈りました。
また、日は決まっていませんが、門松迎えをして、屋敷の門や玄関、祠や土蔵など各所に松を飾り、煤払いをしました。
そして、20日を過ぎると正月準備が忙しくなり、食材や正月道具を買いそろえました。
このほか、農村部では25・26日に納豆ねせをしました。
この納豆は節納豆と呼び、神仏に供えたり、進物にするほか、納豆の糸の出具合から来年の蚕の出来を占ったりもしました。
家老の細川家では、23日の早朝から大量の餅をつき、寺や親戚へも贈りました。
その晩は、餅を叩いて囃すほか、注連縄を撚った後、手伝いの人たちと祝いました。27日には障子や行燈の紙を貼り替え、28日に餅や注連縄を各所に供え、床の間や神棚、仏壇、祠を飾付け、蓬莱飾りや屠蘇銚子の準備しました。
また、正月の来客に記帳してもらう年始帳をこしらえ、硯箱とともに玄関、台所、門に備えました。
そして、大晦日は夕方4時から屋敷の門を開いて、歳暮の来客のためのざくざく煮しめ、炒り蒟蒻、数の子と酒を準備しました。
ざくざくは、芋と人参、牛蒡、焼き豆腐、蒟蒻を煮ました。
夕食は祝膳で、塩引の焼物、汁、香の物、ざくざくと飯で、食後に豆と山椒を入れた福茶を飲み、井戸へ屠蘇袋を入れました。
また、この晩のうちに掃除や雑巾がけをして、雑煮や正月料理、酒の肴や子どもたちへの年玉の準備もしました。
(2024年12月)