本文までスキップする
  • トップページ
  • 三春の歴史こぼれ話5 田村氏三代の墓|Web資料館|三春町歴史民俗資料館

三春の歴史こぼれ話5 田村氏三代の墓|Web資料館|三春町歴史民俗資料館

印刷

掲載している情報は記事執筆時点のものです。現状と異なる場合がありますのでご了承ください。 

Web資料館について、詳しくはこちらをご覧ください。  

Web資料館

三春の歴史こぼれ話 5

田村氏三代の墓

戦国大名田村氏のお墓は、町内御免町の福聚寺に、三基並んで建てられています。
これらのお墓は、右側が初代義顕、真ん中が二代隆顕、左側が三代清顕とされ、昭和52年9月28日、三春町指定文化財となり、現在でも「田村氏三代の墓」として有名なものです。
また、隆顕・清顕のお墓にはそれぞれの戒名が彫られており、義顕の墓は僧形で、手前の線香を置く台に、義顕の戒名と没年が彫られています。

ここでは、これまで「田村氏三代の墓」として疑問も投げかけられずにきたこれらのお墓について、近年発見された史料から、多少の疑問を投げかけてみたいと思います。

さて、江戸時代末期に記された「三春領名所旧跡集松庭雑談」という史料があります。
この中に、田村清顕のお墓について、次のような一文が記されています。

  清秋之墓
 福聚寺にあり。大紋烏帽子着したる石像なり。近年一ノ関大守田村氏より年忌ノ時石塔立。長雲寺殿前光録大夫空山松公大居士ト銘ス。

この記述によれば、左側にある墓石は、江戸時代後期に一関藩田村家で建てた清顕年忌の石塔となります。
そうすると、これとほぼ同型の中央隆顕のお墓も、やはり一関田村家で建てたものと考えられるのです。

つまり、三基ある墓石の内、二基は年忌の石塔であり、墓石ではないということになります。
そして、義顕の墓石とされてきたものの形が、ここでいう「大紋烏帽子着したる」清顕の墓と同じ人型をしていることも判明するのです。

これまで義顕の墓とされてきたものには、確かに手前の台に義顕の戒名と没年が彫られているのですが、この台が創建当初のものであるかどうかは判然としません。
つまり、可能性として、義顕墓と称されているものが、実は清顕の墓なのではないか、ということも考えられるわけで、ここに疑問点があるのです。

僧形の墓と大紋烏帽子の墓、単純に見分けるとすれば、その大きな違いは烏帽子の有無でしょう。
確かに現存する墓には烏帽子もなければ、それらしきものがあった痕跡も見出せません。
しかし、初代義顕の墓石が残りながら、二代・三代の墓が無いというのも不思議な話ですし、何よりも、先の史料が書かれた時(江戸時代末期)には、清顕の墓として「大紋烏帽子着したる」墓が存在したわけで、同じような形の義顕墓に言及されないのも不思議なため、なおさら疑問が深まるのです。

そこで、私見を述べたいと思いますが、前提にすべき点を先に記しておきます。

一つ目は、「松庭雑談」の筆者は城下町に住む武士で、福聚寺の墓所を実際に見ることのできる人物だったということ。

二つ目は、現在の状況からして、江戸時代末期においても、存在した墓の数に変化は無かったと考えられることです。

以上を前提として、私の推測は、二つ。

一つは、「松庭雑談」の筆者は、義顕の墓を清顕の墓と間違い、しかも僧形のものを大紋のものと勘違いし、さらに烏帽子まで付けてしまったということ。
つまり、江戸時代末期には、隆顕・清顕の墓はすでに失われ、義顕の墓のみが残されていた、そのため、一関田村家が隆顕・清顕の年忌のため石塔を建立した、「松庭雑談」の筆者は、一基だけ残っていた墓を清顕のものと勘違いして記した、というものです。

もう一つは、江戸時代後期には義顕・隆顕の墓はすでに失われ、清顕の僧形の墓のみが残されていた、一関田村家では、隆顕・清顕の年忌供養のために同所に石塔を建てた、「松庭雑談」の筆者は、清顕の墓を大紋のものと勘違いし、さらに烏帽子まで付けてしまった、そして、清顕の墓として年忌の石塔が認知されるに従い、清顕の墓を田村初代義顕の墓と勘違いし、誰かがそこに義顕戒名等の付いた台を置いた、というものです。

この二つはいずれも推測でしかなく、それ以外のケースも考えられますが、いずれにしても、田村氏三代の墓の謎は深まるばかりです。

なお、烏帽子も無いのに烏帽子のある墓があると書かれた点は、最も重視すべき点です。
当時は存在したものが、その後なんらかの理由で失われたということも、まったく考えられないわけではありませんが…。
ご教示を得られればと思います。

(1998年8月 藤井 康)

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

お求めの情報が十分掲載されていましたか?
ページの構成や内容、表現は分かりやすいものでしたか?
この情報をすぐに見つけることができましたか?